無料ブログはココログ

« パルナイトレース18年4月動画 | トップページ | シーズンイン »

2018年4月27日 (金)

チャーチルを観る

 以下、映画「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」のネタバレがあります。それが嫌な人は、映画鑑賞後に読むか、この記事を読まないでください。あと、長いよ。

















 その昔、文藝春秋発行の「諸君!」という月刊誌があった。僕の祖父がこの雑誌を購読していて、その影響で僕も読むようになった。そんなに速報性は重要じゃなかったから、以前は祖父が読んだ後に借り、祖父の没後には自分で買うようになった。で、この雑誌で連載していたのが徳岡孝夫(以下・人名敬称略)筆の「チャーチルを読む」であった。ちなみに徳岡孝夫は巻頭コラムの「紳士と淑女」の執筆も担当していた。この紳士と淑女には共感するところも多かったのだが、巻末名物連載の山本夏彦筆「笑わぬでもなし」の内容にはほとんど共感できなかった記憶がある。ただし「文章がうまいなあ」とは思った。池田晶子を知ったのもこの「諸君!」だったので、僕の思想にかなり影響しているのは間違いない。
 前出の「チャーチルを読む」は、いわゆる評伝であり、やがてイギリスの首相になるウィンストン・チャーチルの若き日に始まり、政治家を志し、実際にそうなっていくさまを書いていたのだが、まだまだこれからという時に休載になって、そのまま09年の「諸君!」休刊まで再開されることはなかった。連載を読んでいる最中は「いずれは単行本にまとめられるだろう」と思っていたので、読み終わった「諸君!」は処分してしまっていたが、結局単行本は出なかったから、連載が掲載されていた号だけでもとっておけばよかったと今でも思っている。
 要するにその連載は面白かったのだ。これには徳岡の力量もあるのだろうが、なによりもチャーチルその人自身が魅力的な人物だったのだろうと思う。そうした理由もあり、それ以前はせいぜい社会科の教科書でした見たことのなかったチャーチルという人物のファンになった。とはいえ、その後熱心に他の人が描いた評伝などを読んだかといえばそうでもない。せいぜいネット上で読んだくらい。

 そして時は流れ2018年、アメリカのアカデミー賞で、日本人が「メイクアップ&スタイリング賞」を受賞したというニュースを知った。で、その受賞作がゲイリー・オールドマン主演の「ウィンストン・チャーチル」だというのだ。チャーチルを扱った新作映画があることをこの時に知り、日本で公開されたら見に行こうとも思った。なお、この時点でオールドマンが主演男優賞を取ったことは知らなかった。
 アカデミー賞のニュースからしばらく経ち、ついにその映画が日本でも公開されることになった。邦題は「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」とのこと。「これって絶対本来のタイトルとは違うんだろうな」と思ったが、まあそんなことは気にせず、公開翌々週に劇場に行くことにした。行ったのはレディスデーでもある水曜日で、新宿の大型シネコンプレックスには平日ながら人がいっぱいいたのだが、肝心のチャーチル上映スクリーンはけっこう空いていた。やっぱり題材が地味すぎるんだろうな。でもまあ、他人がポップコーンを食べる音にも悩まされずにゆっくり見ることができた。

 さて、いよいよ上映開始である。僕は映画を見る時にあまり事前情報をチェックすることがないので、チャーチルが主役であっても、どんな内容なのかは知らなかった。そして上映が始まってしばらくすると、スクリーンには「DARKEST HOUR」というタイトルが映し出された。「ああ、やっぱり邦題とは全然違うのね」と、思いつつ鑑賞は進む。実は、僕はこの映画のことをてっきりハリウッド製だと思っていたのだが、主演のオールドマンをはじめ、登場人物のほぼすべてがイギリスのアクセントで英語を話していることに気づき、ちょっと違和感を覚えた。イギリスを舞台にした映画で登場人物がイングリッシュアクセントを使うのは当たり前といえば当たり前なのだが、ハリウッド映画って、イギリス人俳優もアメリカンアクセントで話したりするから、そうじゃないことに少し驚いたのだ。
 また、事前には、チャーチルが首相として奮闘する数年間を描いた内容なのかと思っていたが、実際には1940年5月の首相就任前日からその19日後までの話で、ヒトラー率いるドイツ軍の侵攻によってもたらされた“最も暗い時間”を描いていたものだった。ドイツ軍に次々と蹂躙されるヨーロッパの各国、それに伴いチャーチルにドイツとの和平を進言するイギリス内閣の和平派からの攻勢に悩みつつ、己の信念に従って行動したチャーチルの姿を描いたこの作品は、個人的にいえば非常に面白かった。さすがに僕でもその名前ぐらいは知っているダンケルク撤退戦とダイナモ作戦もからんでくるなど、歴史を知る上でも貴重な作品といえる。僕はクリストファー・ノーラン作品があんまり好きじゃないから、昨年公開の「ダンケルク」も見ていなかったのだが、DARKEST HOUR(真のタイトルを知った後に邦題はあまり使いたくない・笑)を見終わった後に、同行者が「あー、またダンケルクを見たくなった」という気持ちは分かった。やっぱり「ダンケルク」も見るか?
 DARKEST HOUR最大の見どころはやはりオールドマンの演技やストーリーで、特にホントは全然似ていないのに特殊メイクと演技力でホンモノのチャーチルにしか見えなかったオールドマンには脱帽もの。だが、僕的には首相就任前日にチャーチルの若き秘書としてやってきた女優さんが美人なのがとてもポイントが高かった。この秘書さんは実在していたとのことで、本物が美人だったかどうかは知らないが、やっぱり映画ってこういう華やかさは必要だよね。

 ということで満足して鑑賞を終了。僕にしてはめずらく映画のパンフレットまで買ってしまった。そしてそのパンフレットを読んで、オールドマンがアカデミー主演男優賞を受賞していたこと、ハリウッド製ではなくイギリス映画であることなどを知ったのである。だったらイングリッシュアクセントで話すよね。なお、翻訳もあの大御所女史ではなかったからまともでした。うん、面白かったからもう一回見に行こうかな? だが、あのお客さんの数からすると、早めに上映が終了する可能性もあるから気をつけなくちゃ。そりゃまあ、ここまで地味な内容の映画にはそんなに人は入らないよね。

 ああ、「チャーチルを読む」どこかの本で再開しないかなあ……。著者の年齢的に難しいかもしれんが。

« パルナイトレース18年4月動画 | トップページ | シーズンイン »

雑記」カテゴリの記事